LINEの友達一覧をふと開いてみると、写真が変わっている人がいた。
今は髪が伸びて僕のストライクゾーンを大きく外れてはいるはずなのに何故だか心がムズムズする。
2月が終わってしまうその前に。
三年前の2月のこと。
風の噂で以前書いたことがある大学時代に好きだった人が映画に出たというのを知って、その映画がどこで観られるか調べてノコノコ行ってきた。
上映しているのは県内で一箇所だけ。聞いたこともない映画館だった。
映画を観るとなるとイオンシネマぐらいしか行ったことのない僕からするととても小さな映画館だった。
道に面した小さな窓でチケットを買い、中に入るとお客さんはまばらだったが、上映時間が近づくにつれて一個飛ばしで席が埋まった。20人ぐらいだったと思う。誰かと観に来たという感じの人はほとんどいなかった。
映画が始まって、いつどんな役で出て来るのだろうとワクワクしながら観ていると割とすぐにその時が来た。
見覚えのある服を着て現れた。
彼が劇中で着ていた服は大学時代のものだった。提供される衣装なんて無いんだろう。
服には興味が無いと言っていた。
卒業してから何年も経ったのに未だに着ているのが彼らしくて笑うシーンでもないのに可笑かった。
次に声なんだけれどもこれがまた面白かった。講義で彼が発表するのを聞いたことがあるけれど、生気の篭っていないトーンのままで演技していた。つまり棒読み。
そしてなによりスクリーンの中で動いている。あの頃の服であの声で。
脇役で誰も気に留めない存在だろうけれども、この映画館にいる人間で彼と話したことがあるのは僕だけだろうなという特別感もあった。
彼が出ているシーンなんてほんの少しで、僕にとって映画の見所はそこだけだったのだけれど、上映が終わってからの帰り道は真っ暗で寒くても心はポカポカハッピーな感じで。
多分これからもずっと好きなんだろうと思う。
でもあの頃とは違って、悲しくて辛い気持ちになる事は無くなっていて。
なんていうんだろう。非売品で特別仕様の何かを五歩ぐらい離れた所からショーウインドウ越しに見ているような感じ。欲しいけど諦めがつくというか。しょうがないよねディスプレイ用の備品だしみたいな。
わかるかなー?わかんねーだろーな。